FX(外国為替証拠金取引)は、レバレッジを利用することで少ない資金からでも大きな利益を狙える可能性がある、非常に魅力的な投資です。しかし、何の戦略も持たず、ただ闇雲に「上がりそうだから買う」「下がりそうだから売る」といった感覚的な取引を繰り返しても、継続的に利益を上げ続ける可能性は極めて低いです。
FX市場は、世界中のプロのトレーダーや機関投資家、AIによる高速売買がひしめく厳しい世界です。その中で初心者が長期的に生き残り、利益を上げていくためには、羅針盤となる「取引ルール」、すなわち一貫した「取引手法」を持つことが絶対に不可欠になります。
ネルこれからFXを始める初心者の方は、なぜ手法が必要なのか、その本当の意味や具体的な種類、そして手法を運用する上での注意点などを、この記事でしっかりと押さえておきましょう。
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1. FXの取引手法とは「売買するときのルール」のこと
FXの取引手法とは、非常にシンプルに言えば「どのような条件が揃ったら買い、どのような条件が揃ったら売る(決済する)か」という、あなた自身が定めた一貫性のある売買ルールのセットのことです。
「FXで勝てる聖杯(=100%勝てる魔法の手法)はありませんか?」と探す方がいますが、残念ながらそのようなものは存在しません。
FXにおける「手法」とは、「100%勝つためのものではなく、統計的に優位性(エッジ)のある局面、つまり『勝ちやすい場面』でだけエントリーし、『負けやすい場面』を避けるためのルール」だと理解することがスタートラインです。
なぜ「ルール(手法)」が重要なのか?
もしルールを持たずに取引をすると、どうなるでしょうか。 相場が上がれば「もっと上がるかも」と欲が出て利益確定ができず、逆に下がり始めると「いつか戻るはず」と根拠のない期待を抱き、損失を確定(損切り)できません。
これは、人間の脳に組み込まれた「プロスペクト理論」という心理的なワナによるものです。人間は本能的に「利益は早く確定させたく、損失は先延ばしにしたい」と感じるようにできています。 この本能のままに取引すると、利益は小さく、損失は大きくなる「損大利小(そんだいりしょう)」という、トレーダーにとって最も致命的な結果を招いてしまいます。
この、FXで勝つためには不合理な「人間の本能的な感情(恐怖や欲望)」を抑え込み、合理的な判断を下すためにこそ、「手法(ルール)」が必要なのです。
手法(ルール)を守るメリット
- 感情の影響を排除できる
- 最も大きなメリットです。「なんとなく」や「熱くなって」といった感情的なトレードを排除し、「ルールに合致したからエントリーする」「ルールに抵触したから損切りする」という機械的な作業に落とし込むことができます。
- 取引の結果を安定させることができる
- ルールに基づかない取引は、勝っても負けても「なぜそうなったか」が不明確なため、次につながりません。一貫したルールで取引することで、初めてその手法の期待値(トータルでプラスになるか)が見えてきます。
- 再現性を高め、改善(PDCA)ができる
- 「こういうパターンで勝てた」「こういうパターンでは負けた」という取引結果を記録・分析することができます。
- 「Aという手法は、上昇トレンドでは機能するが、レンジ相場では負けやすい」といった特徴がわかれば、「レンジ相場ではこの手法を使わない」または「手法を微調整する」といった**具体的な改善(PDCAサイクル)**が可能になります。
自分なりに独自の改善を試みることも将来的には良いのですが、FXで勝ち続けるための第一歩は、まず「自身で(シンプルな)ルールを設定し、そのルールを何があっても守って取引をしてみる」ことなのです。
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2. FXで売買する「方向性」は2種類
FXの取引手法は、その「エントリーする方向性」によって、大きく2つの種類に分けることができます。「順張り(じゅんばり)」と「逆張り(ぎゃくばり)」です。
2-1. 順張り(トレンドフォロー)
順張りとは、相場の大きな流れ(トレンド)と同じ方向に沿ったポジションを保有する取引手法です。FXトレーダーの間では「トレンドフォロー」とも呼ばれ、王道中の王道とされる考え方です。
- 相場が上昇トレンド中(価格が切り上がり続けている状態)であれば、「買い」でエントリーします。
- 相場が下降トレンド中(価格が切り下がり続けている状態)であれば、「売り」でエントリーします。
順張りのメリット
- 大きな利益が期待できる(損小利大)
- トレンドという「大きな流れ」に乗るため、一度価格が伸び始めると、利益がどんどん大きくなる可能性があります。「利益を伸ばす」というFXの理想である「損小利大」を実現しやすいのが最大のメリットです。
- 精神的な負担が少ない
- 相場の流れに乗っているため、含み益が出ている時間が長くなりやすく、精神的にゆとりを持って取引しやすい傾向があります。
- テクニカル分析が機能しやすい
- 多くの市場参加者がトレンドを意識しているため、トレンドラインや移動平均線といったトレンド系のテクニカル分析が機能しやすい場面が多いです。
順張りのデメリット
- エントリーのタイミングが難しい
- トレンドが出ているのはわかっても、「いつ買うか?」が問題です。トレンドの途中で慌ててエントリーすると、その直後に一時的な調整(押し目・戻り)が入り、含み損を抱えたり、損切りになったりする「高値掴み・安値売り」のリスクが常に伴います。
- 理想的なエントリーポイントである「押し目(上昇トレンド中の一時的な下落)」や「戻り(下降トレンド中の一時的な上昇)」を待つ必要がありますが、その見極めには経験が必要です。
- 取引回数が少なくなる
- 明確なトレンドが発生している局面を待つ必要があるため、レンジ相場(方向感のない相場)が続くと、エントリーチャンスがなかなか訪れません。



順張りは、「強い流れには逆らわない」という、とても合理的な手法です。初心者のうちは、まずこの「順張り」をマスターすることをおすすめします。 焦って飛び乗らず、トレンド中の「一時的なお休み(押し目・戻り)」をじっくり待ってからエントリーするのがコツですよ。
2-2. 逆張り(カウンタートレード)
逆張りとは、相場のトレンドに逆らって、反対方向のポジションを保有する取引手法です。「カウンタートレード」とも呼ばれます。
逆張りのメリット
- エントリーチャンスが多い
- 相場は常に一方向に動いているわけではなく、上がったり下がったりを繰り返しています(特にレンジ相場)。「上がりすぎたから売る」「下がりすぎたから買う」という判断ポイントは頻繁に訪れるため、取引回数が多くなりがちです。
- 利益確定(利食い)が早い
- トレンドに逆らっているため、「少し戻ったらすぐに利益を確定する」という短期的な売買になりやすいです。コツコツと利益を積み重ねるケースがよく見られます。
- トレンドの転換点を掴めると大きな利益になる
- もし相場の反転(天井や大底)をうまく掴むことができれば、その後の大きなトレンドの初動から乗れることになり、逆張りから始まったポジションが結果的に最大の利益につながる可能性もあります。
逆張りのデメリット
- トレンド転換の判断が非常に難しい
- 最大のデメリットです。「そろそろ反転するだろう」という予測が外れ、トレンドが継続した場合、含み損はあっという間に膨れ上がります。
- 「コツコツドカン」になりやすい
- 小さな利益(コツコツ)を9回積み重ねても、たった1回の損切り失敗(ドカン)で、それまでの利益をすべて失う危険性が常にあります。
- 損切り(ロスカット)が必須
- 逆張りは「トレンドに逆らう」という高リスクな行為であるため、「予測が外れたら即座に損切りする」という鉄の規律がなければ、一瞬で市場から退場することになります。
一般的に、FXはトレンドに乗る「順張り」の方が、初心者にとっては安全で、かつ利益を上げやすいといわれています。逆張りは、相場の経験と厳格なリスク管理が求められる、上級者向けの手法であると認識しておきましょう。
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3. FXの「取引スタイル」は4つ
FXの手法を考える上で、売買の方向性(順張り/逆張り)と並んで重要なのが、「取引スタイル」です。
取引スタイルとは、簡単に言うと、1回の取引(ポジションを持ってから決済するまで)にかける時間の長短に応じた、取引のパターン(分類)を指します。 これは大きく分けて以下の4つに分類されます。
- スキャルピング(超短期)
- デイトレード(短期)
- スイングトレード(中期)
- ポジショントレード(長期)
どのスタイルが優れている、というものではありません。 ご自身のライフスタイル(仕事や家事などでチャートを見られる時間)、性格(せっかちか、のんびりか)、そして投資に対するポリシー(コツコツ稼ぎたいか、大きく狙いたいか)などを考慮し、ご自身に最も合った、ストレスなく続けられるものを選ぶことが何よりも重要です。
3-1. スキャルピング
スキャルピングは、注文から決済までの期間が数秒から数分という、非常に短期間で取引を完了させる手法です。「スキャルプ」とは「頭の皮を薄く剥ぐ」という意味で、薄い利益を狙う様子から名付けられました。
1日に何十回、時には何百回と繰り返し取引を行い、1回あたり数pips(※)というごくわずかな利益をコツコツと積み重ねていきます。 (※pips:ピップス。為替レートが動く最小単位の一つ)
メリット
- 資金効率が非常に高い: 1日に何度も取引するため、少ない資金でも回転させて大きな利益を狙える可能性があります。
- リスクが限定的: ポジションを持つ時間が極端に短いため、経済指標の発表や要人発言といった、相場の急変動(ファンダメンタルズリスク)に巻き込まれる可能性が低いです。
デメリット
- 取引コスト(スプレッド)がかさむ: 取引回数が多いため、売値と買値の差であるスプレッド(手数料)が利益を圧迫します。スプレッドが極端に狭い業者を選ぶことが必須です。
- 高度な判断力と集中力が必要: 瞬時の値動きに対応し、エントリーと決済を機械的に繰り返す必要があるため、極度の集中力と精神的なタフネスが求められます。
- 常にチャートに張り付く必要がある: 数秒単位の勝負になるため、取引中はチャート画面から目が離せません。
向いている人
- ゲーム感覚で瞬発的な判断が得意な人
- まとまった時間、PCの前に張り付いて集中できる人
- 感情を無にして、機械的に損切りと利食いができる人



スキャルピングは、F1レースのようなものです。非常にエキサイティングですが、一瞬の判断ミスが大きな事故につながります。 1回の取引でとるリスク(損切り幅)は非常に小さいですが、高度な技術が必要になるため、初心者の方にはやや難易度が高いといえます。
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3-2. デイトレード
デイトレードは、注文から決済までをその日のうちに(数十分〜数時間で)完了させる取引手法です。ポジションを翌日に持ち越さない(オーバーナイトしない)のが原則です。
メリット
- 就寝中の為替変動リスクを回避できる: 寝る前に必ず決済するため、「朝起きたら、寝ている間に相場が逆行して大損していた」というオーバーナイトリスクをゼロにできます。精神衛生上、非常に健全なスタイルです。
- スキャルピングより大きな利益が狙える: スキャルピングよりポジションの保有時間が長くなるだけに、狙う値幅も数十pipsと大きくなる傾向があり、1回の取引での利益がスキャルピングよりも大きくなりやすいです。
- 取引コストの影響が相対的に小さい: 1日の取引回数は数回程度のため、スキャルピングほどスプレッドコストに神経質にならなくても済みます。
デメリット
- ある程度まとまった時間が必要: エントリーチャンスを探したり、ポジションを管理したりするために、1日数時間はチャートと向き合う時間が必要になります。
- トレンドの「美味しい部分」を逃すことも: 本来なら数日間続くような大きなトレンドが発生しても、その日のうちに決済してしまうため、翌日以降の利益を逃すことになります。
向いている人
- 毎日決まった時間(例:夜9時~12時など)に、集中してトレードできる時間を作れる人
- ポジションを翌日に持ち越して、寝ている間も心配するのが嫌な人
- コツコツ型とじっくり型の中間的なスタイルを好む人
3-3. スイングトレード
メリット
- 多忙な人でも実践可能: 一度ポジションを保有したら、毎日チャートに張り付く必要はありません。1日の終わりにチャートを確認して、損切りラインにかかっていないか、利益確定の目標に達していないかをチェックする程度で良いため、ゆとりをもった取引を行えます。
- 大きな値幅(利益)が狙える: 数日〜数週間のトレンドに乗るため、狙う利益幅は100pips〜数百pips単位となり、1回の取引で大きな利益を期待できます。
- テクニカル分析が機能しやすい: 短期売買に比べて「ダマシ」が少なく、日足や週足のトレンドライン、移動平均線などが素直に機能しやすい傾向があります。
デメリット
- オーバーナイトリスクを負う: ポジションを数日間持ち越すため、寝ている間や週末に大きなニュース(地政学リスクなど)が発生し、週明けの窓開け(※)などで大きな損失を被るリスクがあります。(※窓:週末の終値と週明けの始値が大きく乖離すること)
- 含み損に耐える忍耐力が必要: ポジション保有中に一時的な逆行で含み損を抱える期間も長くなります。それに耐えられず損切りしてしまうと、利益を得られません。
- スワップポイントの影響を受ける: ポジションを日々持ち越すため、金利差(スワップポイント)がプラスなら利益になりますが、マイナススワップのポジションだとコストとして積み重なっていきます。
向いている人
- 日中は仕事や家事で忙しく、チャートを頻繁に見られないサラリーマンや主婦の方
- 日々の細かい値動きに一喜一憂したくない、ゆったりと構えたい人
- FX初心者の人(最もバランスが取れており、おすすめしやすいスタイルです)



スイングトレードは、釣りによく例えられます。良いポイント(エントリーチャンス)で仕掛けを投下したら、あとは魚(利益)がかかるまでじっくり待つスタイルです。 日々の値動きに惑わされず、大きな流れを捉える練習になるため、初心者の方に最もおすすめのスタイルになります。ただし、雇用統計や政策金利など重要な指標が発表されるときは、相場が急な変動が起きやすいため、ポジションサイズを小さくするなどの注意が必要です。
3-4. ポジショントレード
ポジショントレードは、明確な期間は決まっていませんが、約半年から1年、あるいは数年という長期的な期間で取引を行う手法です。4つのスタイルの中で最も時間軸が長くなります。
メリット
- 日々の値動きを気にする必要がほぼない: 数ヶ月〜数年単位のトレンドを狙うため、日々の細かい値動きは「ノイズ」として無視します。最もゆったりと取引を行うことができます。
- スワップポイント(金利差益)も狙える: 高金利通貨の買いポジションなどを長期保有することで、為替差益だけでなく、スワップポイントによるインカムゲインも継続的に狙えます。
- 最大の利益幅が期待できる: 一国の経済状況の変化といった、最も大きなトレンドの根幹を捉えるため、数千pipsといった莫大な利益につながる可能性があります。
デメリット
- 高度なファンダメンタルズ分析が必要: ポジショントレードでは、短期的なテクニカル分析よりも、各国の経済状況や金融政策の方向性といった、長期的なファンダメンタルズ分析のほうが重要になる傾向があります。
- 莫大な含み損に耐える必要がある: 長期保有の過程では、数百pips単位の一時的な逆行(含み損)は当たり前に発生します。それに耐えられるだけの強靭なメンタルと、十分な資金力(証拠金)が必要です。
- 資金効率が悪い: ポジションを長期間保有するため、その間は証拠金が拘束されます。また、ロスカットされないようレバレッジを極端に低く(1〜3倍程度)抑える必要があり、資金効率は最も悪くなります。
向いている人
- 豊富な資金力(証拠金)を持っている人
- 日々のトレードよりも、各国の経済や金融政策を分析するのが好きな人
- 数年単位の超長期的な目線で資産運用を考えられる人
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4. FXの相場分析方法は2種類
- テクニカル分析
- ファンダメンタルズ分析
4-1. テクニカル分析
テクニカル分析とは、過去のチャート(価格や出来高など)の値動きを分析して、将来の値動きを予測する分析方法です。
「歴史は繰り返す」という相場格言がありますが、これは、過去に特定のチャートパターン(例:上昇トレンド中の一時的な下落)が出現した際、市場参加者(人間)が同じような心理状態になり、結果として同じような値動き(例:再び上昇)をする可能性が高い、という考え方に基づいています。
さらに、過去のパターンを分析し、統計的な優位性を探ることで、新たな流れを予測することも可能でしょう。
テクニカル分析の代表例
- ローソク足: 1本で「始値・終値・高値・安値」の4つの情報を持ち、市場心理を視覚的に読み解きます。
- ライン分析: チャート上に「トレンドライン」や「サポート/レジスタンスライン」を引き、トレンドの方向性や反発・ブレイクのポイントを探ります。
- テクニカル指標(インジケーター):
- トレンド系: 移動平均線、ボリンジャーバンド、一目均衡表など(トレンドの方向性や強さを測る)
- オシレーター系: RSI、MACD、ストキャスティクスなど(「買われすぎ」「売られすぎ」といった相場の過熱感を測る)
テクニカル分析は、視覚的に分かりやすく、多くのトレーダーが共通の指標(例:200日移動平均線など)を利用しているため、「自己実現的予言(多くの人が意識するからこそ、その通りに動きやすくなる)」という側面もあります。 短期売買(スキャルピングやデイトレード)では、ほぼテクニカル分析のみで取引するトレーダーも多く、FXを学ぶ上で必須の分析方法です。
4-2. ファンダメンタルズ分析
ファンダメンタルズ分析とは、各国の経済状況や金融政策、物価の動向、政治情勢、貿易収支など、その国の「経済の基礎的条件(ファンダメンタルズ)」を分析し、将来の為替レート(通貨の価値)を予測する分析方法です。
ファンダメンタルズ分析の主な要因
- 金融政策(最重要): 各国中央銀行の「政策金利」の動向。金利が高い国の通貨は、低い国の通貨に比べて買われやすくなります(高金利通貨を持つと利息がもらえるため)。
- 経済指標: GDP(国内総生産)、雇用統計、CPI(消費者物価指数)など、国の経済状態を示す成績表。
- 要人発言: 中央銀行総裁(日銀の植田総裁、FRBのパウエル議長など)や、政府高官の発言。
- 地政学リスク: 戦争や紛争、テロなど。
時代が進んで個人でもインターネットを通じて取得できる情報は格段に増えているものの、逆に多すぎる情報の取捨選択や、複雑な経済ニュースの扱い方などに戸惑うこともあるかもしれません。
両者の使い分け
- スイング〜ポジショントレード: ファンダメンタルズ分析で「円安になりそうだ」といった大きな方向性を決め、テクニカル分析で「どのタイミングで買うか」という具体的なエントリーポイントを探る、といった使い分けが王道です。
- スキャルピング〜デイトレード: 基本はテクニカル分析がメインですが、重要な経済指標の発表時間だけは把握しておき、その前後は取引を避ける(リスク管理)、といった形でファンダメンタルズも利用します。



慣れないうちは、情報が複雑なファンダメンタルズ分析よりも、チャートを見れば判断できるテクニカル分析をメインに取り組むこともひとつの方法でしょう。 まずはテクニカル分析の基本を覚え、取引に慣れてきたら、徐々にファンダメンタルズ分析(特に政策金利と経済指標)の知識も加えていくのがおすすめです。
5. テクニカル分析を使ったFXの取引手法
ここでは、一般的にテクニカル分析の中でも特に知名度が高く、初心者でも理解しやすい「ローソク足」「移動平均線」「ボリンジャーバンド」を活用した、具体的な取引手法(エントリーと決済のルール例)について紹介します。
5-1. ローソク足を使った取引手法
ローソク足とは、その名の通り蝋燭に似た形をしているチャートの基本要素です。1本で「高値・安値・終値・始値」という4つの価格情報(四本値)を表示しているため、一目でその期間(例:1時間足なら1時間)の相場の値動きや勢いを把握することができます。
- 始値よりも終値のほうが高いものを「陽線」と呼びます(買いの勢いが強かったことを示す)。
- 始値よりも終値のほうが低いものを「陰線」と呼びます(売りの勢いが強かったことを示す)。
- 下ヒゲが長い: 一旦は安値を付けたが、買いの力で押し戻された(=下値が堅い、買いのサイン)
- 上ヒゲが長い: 一旦は高値を付けたが、売りの力で押し戻された(=上値が重い、売りのサイン)
【手法例】ピンバー(ヒゲ)を使った逆張り
特に「ピンバー」(実体が非常に小さく、片方にだけ長いヒゲが出ているローソク足)は、トレンド転換のサインとして有名です。
- ルール(買い):
- 相場が下落した後、重要なサポートライン(過去に何度も反発している価格帯)付近で「長い下ヒゲ」を持つピンバー(陽線でも陰線でも可)が出現する。
- 次の足が、そのピンバーの安値を更新しなかったことを確認して「買い」エントリー。
- 損切りは、ピンバーの安値の少し下に置く。
- 利益確定は、直近の高値(レジスタンスライン)など。
- ルール(売り):
- 相場が上昇した後、重要なレジスタンスライン付近で「長い上ヒゲ」を持つピンバーが出現する。
- 次の足が、ピンバーの高値を更新しなかったことを確認して「売り」エントリー。
- 損切りは、ピンバーの高値の少し上に置く。
このように、ローソク足の「形」そのものに市場心理が表れるため、他のテクニカル指標と組み合わせて使うことで、エントリーの精度を高めることができます。
5-2. 移動平均線(MA)を使った取引手法
移動平均線(Moving Average, MA)は、ある一定期間の終値を平均して、それを線で結んで表示するインジケーターです。テクニカル分析の王様とも呼ばれ、世界中のトレーダーが最も意識している指標の一つです。
- 移動平均線が上向きで、価格(ローソク足)が線より上にあれば「上昇トレンド」(買いが優勢)
- 移動平均線が下向きで、価格(ローソク足)が線より下にあれば「下降トレンド」(売りが優勢)
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【手法例】ゴールデンクロス・デッドクロス(順張り)
最も有名でシンプルな手法が、2本の移動平均線(短期線と長期線)を使った「クロス」です。
- ルール(買い:ゴールデンクロス):
- 短期移動平均線(例:20日線)が、長期移動平均線(例:75日線)を「下から上に」突き抜ける(=ゴールデンクロス)。
- クロスしたのを確認して「買い」エントリー。
- 損切りは、長期移動平均線(75日線)を明確に下回った地点。
- 利益確定は、次にデッドクロスが発生するまで保有する(利益を伸ばす)。
- ルール(売り:デッドクロス):
- 短期移動平均線(例:20日線)が、長期移動平均線(例:75日線)を「上から下に」突き抜ける(=デッドクロス)。
- クロスしたのを確認して「売り」エントリー。
- 損切りは、長期移動平均線(75日線)を明確に上回った地点。
- 利益確定は、次にゴールデンクロスが発生するまで保有する。
この手法はトレンドの発生を捉えるのに有効ですが、レンジ相場では何度もダマシ(クロスしてもすぐに戻る)が発生する点には注意が必要です。 移動平均線と価格の位置を見ることで相場状況を分析できるため、初心者にも非常に使いやすいインジケーターです。
5-3. ボリンジャーバンドを使った取引手法
ボリンジャーバンドは、統計学の「標準偏差(σ:シグマ)」を応用したテクニカル指標です。移動平均線(センターライン)の上下に、値動きの「ばらつき(ボラティリティ)」を示す線を複数(通常は±1σ、±2σ、±3σ)引きます。
ボリンジャーバンドには、価格の約95.4%が「±2σ」のバンド内に収まるという統計的な性質があります。
【手法例1】±2σラインでの反発(逆張り)
この統計的な性質を利用した、レンジ相場向けの逆張り手法です。
- ルール(買い):
- バンドの幅が狭い(=レンジ相場)の時に、価格が「-2σ」のラインにタッチ、または突き抜ける。
- 反発してローソク足の実体がバンド内に戻ってきたのを確認して「買い」エントリー。
- 損切りは、-2σのラインの少し下。
- 利益確定は、センターライン(移動平均線)または反対側の「+2σ」ライン。
- ルール(売り):
- レンジ相場で、価格が「+2σ」のラインにタッチ、または突き抜ける。
- 反発してバンド内に戻ってきたのを確認して「売り」エントリー。
- 損切りは、+2σのラインの少し上。
【手法例2】バンドウォーク(順張り)
ボリンジャーバンドの標準偏差が急激に拡大(エクスパンション)し始めた時は、強いトレンドが発生したサインです。この時、価格が±2σのラインに沿って動き続ける現象を「バンドウォーク」と呼びます。
- ルール(買い):
- バンドが拡大し始め、価格が「+2σ」のラインに張り付いて上昇を続ける(バンドウォーク)。
- このトレンドに乗って「買い」エントリー。
- 利益確定は、ローソク足の実体がセンターラインを明確に下回るまで(トレンド終了のサイン)。
- (注意) この時、逆張り(売り)をしてはいけません。
ボリンジャーバンドは、標準偏差が「拡大(エクスパンション)」していればトレンド発生(順張りチャンス)、逆に「収縮(スクイーズ)」していればレンジ相場(逆張りチャンス)と、相場のボラティリティを把握すれば、順張りと逆張りの両方に使える便利なインジケーターです。



FX会社によっては、こうしたテクニカル分析を自動で行い、「今、買いシグナルが出ていますよ」と教えてくれる便利なツールを提供している場合があります。
6. FXの手法に関する注意点(初心者が避けるべきこと)
FXの手法はたくさん存在しますが、中には初心者の方が安易に手を出すと、大きな損失につながりかねない危険な手法(あるいは、手法と呼べない悪癖)もあります。 ここでは、手法を活用するうえで特に注意しておきたい点について紹介します。
6-1. ナンピン(難平)に頼らないこと
ナンピン(難平)とは、含み損のポジションを保有している状態で、さらに不利な価格で新たにポジションを追加(買い増し・売り増し)していく手法です。
(例:1ドル=150円で買ったが、149円に下がった。ここでさらに買い増しする)
これにより、ポジションの平均取得コストを下げる(この例では149.5円になる)役割がありますが、その分、保有するポジション量(リスク)も2倍、3倍と大きくなります。
ナンピンが成功し、価格が平均コストまで戻れば、1回目より少ない戻りで利益を出す(あるいはトントンで逃げる)ことが可能です。しかし、予測に反してトレンドが継続し、価格が戻ってこなかった場合、損失は加速度的に膨れ上がり、一瞬で強制ロスカット(破産)に至ります。
含み損になったからといって、何の計画も戦略もなく反射的にナンピンを行うのは、ただのリスク倍増行為であり、最悪の悪手です。 「分割エントリー」という計画的な手法もありますが、それは高度な資金管理が前提です。初心者のうちは、「含み損が出たら、ナンピンではなく損切りする」ことを徹底しましょう。
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6-2. 両建ては(原則として)おすすめできない
両建てとは、同一通貨ペアの「買いポジション」と「売りポジション」を同時に保有することです。
(例:米ドル/円の「買い」1万通貨と、「売り」1万通貨を同時に持つ)
両建てのデメリット
- 二重の取引コストがかかる: 買いと売りの2つのポジションを保有するため、スプレッド(手数料)が単純に2倍かかります。
- スワップポイントがマイナスになる: ほとんどのFX会社では、買いスワップ(受け取り)よりも売りスワップ(支払い)の方が大きく設定されています。そのため、両建てをすると、その差額分だけ毎日コスト(損失)が発生し続けます。
- 決済が非常に難しい: 相場が動いた後、どちらかのポジション(含み益側)を決済し、もう一方(含み損側)を保有し続けることになりますが、その判断は非常に困難です。結局、含み損のポジションだけが残り、損失が拡大するケースが多々あります。
- 証拠金が無駄に拘束される: 2つのポジション分の証拠金が必要になります。
- (根本的な問題) 当たり前ですが、両建てをするということは、どちらかのポジションが必ず含み損を抱えた状態になっていることも忘れてはいけません。
両建ては、税金対策や特殊なアービトラージ戦略などで使われることもありますが、基本的には「損切りしたくない」という心理から逃げるための非合理的な行為になりがちです。 シンプルに「買い」か「売り」か、どちらか一方のポジションを持つことを心がけましょう。
7. FXの手法に関するよくある質問
FXの手法に関して、初心者の方が抱きやすい疑問についてお答えします。
Q1. 手法は1つにこだわらない方がいいですか? 複数持つべきですか?
この世にFXの手法はたくさん存在しますが、結論からお答えすると、初心者のうちは「まず1つの手法に決めて、それを徹底的に極める」ほうが良いです。
あれもこれもと色々な手法に手を出すと、どれも経験値が中途半端となってしまい、結局「どの手法が自分に合っているのか」「なぜ勝てた/負けたのか」の分析ができなくなってしまいます。
まずは、ご自身の取引スタイル(スイングトレードなど)に合ったシンプルな手法(移動平均線のゴールデンクロスなど)を1つ選びます。そして、その手法を過去のチャートで検証(バックテスト)し、デモトレードで練習を重ねます。
その過程で、「この手法が得意な相場(例:トレンド相場)」と「苦手な相場(例:レンジ相場)」が必ず見えてきます。 その手法の根本は変えるべきではありませんが、「レンジ相場ではエントリーを見送る」といった微調整(フィルター)を加える必要はあります。
その1つの手法をマスターし、安定して利益が出せるようになった後で、苦手な相場(例:レンジ相場)に対応するために、2つ目の手法(例:ボリンジャーバンドの逆張り)を学ぶ、というステップアップが理想的です。
FXで継続的な利益を目指すのであれば、優位性のある一貫した売買ルール(手法)を、まずは1つ確立することが最も大切です。
Q2. 勝率はどれくらい必要ですか?
FXを始めたばかりの方は「勝率90%の手法」などを探しがちですが、FXでは勝率の高さが必ずしもトータルの利益につながるとは限りません。
- (例)リスクリワード 1 : 2
- 損切り幅を「-20 pips」に設定
- 利益確定幅を「+40 pips」に設定
この「リスクリワード 1:2」のルールを守って取引した場合、勝率はどれくらい必要でしょうか?
- 10回取引して、4回勝ち(+40 pips × 4回 = +160 pips)
- 10回取引して、6回負け(-20 pips × 6回 = -120 pips)
- 合計:+40 pips の利益
この通り、勝率がたった40%(10回中6回負け)でも、トータルでは利益が残ります。
逆に、勝率が90%でも、
- 9回勝ち(+10 pips × 9回 = +90 pips)
- 1回負け(-100 pips × 1回 = -100 pips)
- 合計:-10 pips の損失
となってしまいます。これが「コツコツドカン」の正体であり、「損小利大」がいかに重要かがわかります。 高い勝率を目指すよりも、まずは「損失を小さく限定し、利益をしっかり伸ばす」という、リスクリワードの良い手法(ルール)を構築することを目指しましょう。
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8. まとめ:FX初心者はシンプルな取引手法から始めてみよう
この記事では、FXの手法とは何か、その基本から具体的な手法例、注意点までを詳しく解説してきました。
「FXの手法はどうやって決めたらいいの?」と迷うかもしれませんが、初心者の方は、まずはご自身のライフスタイル(取引できる時間帯)に合った「取引スタイル」を決め、そこから「シンプルな取引手法」から始めることを強くおすすめします。
本記事でも紹介した、
- 移動平均線(ゴールデンクロス/デッドクロスでの順張り)
- ボリンジャーバンド(レンジでの逆張り、トレンドでの順張り)
といった、視覚的にも分かりやすいテクニカル指標の使い方から覚えてみましょう。 そして、その手法を「過去検証(バックテスト)」と「デモトレード」で練習し、自分なりの「マイルール」として確立していくことが大切です。
手法が確立できたら、あとは「資金管理(レバレッジを低く)」と「損切りルール」を徹底し、感情を排してルール通りに取引を繰り返すだけです。 焦らず、一歩ずつ経験を積んでいきましょう。



FXの手法とは、あなたを勝利に導く「魔法」ではなく、あなたが市場という荒波で遭難しないための「羅針盤」であり「救命胴衣」です。 完璧な手法はありませんが、あなたに「合った」手法は必ず見つかります。まずはシンプルなルールを守り抜く訓練から始めてみてくださいね。応援しています!
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